道路との境界確定をする時の盲点

【境界確定:難事例】道路(公道)との境界を確定する時の盲点

道路管理者と立ち会い!?

境界確定をする土地が公道と接している場合、境界が未確定の時は、道路の管理者と立会を行わなければならない・・・ということをご存知ですか?

「うちの前は道路との境界決まっていないの!?」とびっくりする方も多いのですが、かなりの確率で道路境界は決まっておらず、道路管理者と立ち会うことになります。

▶︎市が管理している道路(市道)と接している場合
→市役所の道路を管理している部署へ、

▶︎県が管理している道路(県道)と接している場合
→土木事務所(県の出先機関)へ、

▶︎国道と接している場合
→国道事務所へ

道路境界確定の申請書を提出することになります。

道路境界を確定する際の「盲点」

道路境界の確定をするためには、測量地と接する両サイドの土地地主と立会を行います。それから殆どのケースで道路対向の地主さんとも境界線の立ち合いを行わなければなりません。

境界立会のお願いに行くと、
「なんで土地が接していないのにうちが立ち会わなくてはならないの??」とイヤな顔をされます。

道路は幅員を持つため、道路管理者から「道路幅員は○○m以上確保して道路境界線は決めてください」と言われることが多く、幅員を確保して道路境界を道路対向の地主さんにも確認して頂く必要があるのです。

現地がU字溝やブロックが以前からあり、測量をしてみたら道路側へはみ出ていたなんていうこともあります。そんな事例をお話したいと思います。

3ヶ月の予定が1年に・・・

現場は東京都港区、車通りの多い国道沿いにある100坪くらいの土地でした。

確定測量を行い、土地を担保に入れて、アパートを建てる計画でした。

現場に行きますと、現場の北側が4車線の国道、西側が古い店舗ビル、南側と東側に大きなビルが建っていました。敷地にも古い建物が建っており、狭くて体を入れるのも大変そうな現場でした。

調査を進めると、国道は未確定であることがわかりました。
国道は、国土交通省の国道事務所というところが管理しており、そちらへ道路境界確定の申請をしました。

国道事務所の担当者によると、
測量地と接する両サイドの地主のほか、道路の対抗の所有者3名とも立ち合いをしなければならないとのこと。

幅員は40メートル近くあり、道路対向の地主に境界立会のお願に行くと、案の定そのうちの一人から「あんなはるか向こうの境界線のことで私がなぜ立ち会わなくてはならないのよ!」と言われてしまいました。測量業者としては、この時点でかなり凹みます。

この先またこの地主と話をしなくてはならないのか・・と考えてしまいます。

現状把握のため、現況測量を行いました。
国道事務所の担当と何度も打ち合わせを行い、結果なんと道路対向の土地に道路沿いに設置されているブロック塀が道路に食い込んでいることが分かったのです!

道路対向の地主に頭を下げ、立会に来ていただく日を決めて、その日を迎えました。
測量の依頼者、私と従業員、国道事務所の職員2名、道路対向の地主3名が測量地の道路対向にある歩道上に立っています。境界立会の進行は私が行います。

「本日はお忙しいところお時間をいただき有難うございます」といって始まりました。

Cさんの迫力がすごかったのと、その場の雰囲気で先ほどは承諾したと言ってくれたAさんBさんも、Cさんが承諾しないのなら私も認められない!と言い出したのです。

ホッとした雰囲気が一気に凍り付きました・・・

道路対向の地主が境界線の承諾しない
→道路境界が決まらない(不調)
→測量地の境界確定ができない
→測量地に家を建てるための融資が銀行から下りない
→建物を建てられない
 ということになるのです。

結局、何度も何度も足を運び、頭を下げ、印鑑をいただくことはできましたが、当初の予定では3か月程度宇で終わると思っていた測量自体は1年近くかかってしまいました。

トラブル予防対策

本ケースは、3か月くらいで終わると思っていた測量が1年近くかかり、土地に担保をつけてお金を借りて、建物を建築しようとする計画が大幅な変更を余儀なくされてしまいました。

隣接地所有者や近隣の方々の協力なしでは測量はうまくいきません。お互い様で助け合うことが必要です。

お隣や近隣で測量の協力を求められた際は、必ず立会いに応じてあげてください。

最近は空き家が増えたため、境界立会を行うことができないケースも増えてきました。以前は市役所で税金を支払っている当事者の連絡先を教えてくれたのですが、近年は個人情報保護のため教えてくれません。町会や近所の方に聞いても、教えられないと断られてしまいます。

土地家屋調査士は、業務の範囲内で職務上請求用紙を使用して隣接人の住所を調べることができますが、極めて慎重に使用することが義務付けられております。

よって使用する範囲についても慎重にならざるを得ません。ある程度の範囲を越えてしまうと、手の打ちようがありません。

そんな背景から、測量着手から終了まで、場合によっては1年近くかかる場合もあります。相続した土地や住まなくなった土地建物を売却する際、殆どのケースで確定測量が必要になります。

私からのお願いは、
①時間に余裕を持って確定測量を計画していただきたい
②近隣とうまくお付き合いをして、普段顔を合わせづらい方からは必ず連絡先を聞いておいていただきたい。

ちょっと前まで会えば挨拶していたのに、老人ホームに入ってしまって連絡が取れなくなってしまう・・というケースはよく聞きます。

事例のように道路境界は道路対向の地主さんからの協力が必要なケースも多々あります。隣接地主だけでなく近隣とのコミュニケーションを大事にしていただけると幸いです。